2026年最新版 港区・新橋の中小企業経営者のための役員報酬改定の税務実務
第4回/全5回:業績悪化時の減額改定と損金算入が否認されるケース
執筆:No.1税理士法人
経営環境の変化が激しい昨今、港区・新橋エリアの中小企業でも、年度途中で役員報酬の減額を検討せざるを得ない場面があります。第4回では、「業績悪化改定事由」による減額改定の要件と、損金算入が否認される典型的なケースを解説します。
1. 業績悪化改定事由とは
法人税法施行令第69条第1項第1号ハでは、「経営の状況が著しく悪化したことその他これに類する理由」による定期給与の減額改定を認めています。法人税基本通達9-2-13では、これを「経営状況が著しく悪化したことなどやむを得ず役員給与を減額せざるを得ない事情があること」と解説しています。
重要なのは、増額改定は業績悪化改定事由では認められないという点です。業績悪化改定事由による改定は、減額改定に限定されています。
2. 業績悪化改定事由に該当する具体例
国税庁の「役員給与に関するQ&A」では、以下のケースが業績悪化改定事由に該当するとされています。
- 株主との関係上、業績や財務状況の悪化についての役員としての経営上の責任から減額せざるを得ない場合
- 取引銀行との借入金返済のリスケジュール協議において、役員給与の減額を求められた場合
- 業績・財務状況・資金繰りが悪化し、取引先等の利害関係者からの信用維持のため経営改善計画に減額が盛り込まれた場合
- 主要得意先の経営悪化により、今後の売上激減が不可避と認められる場合(予防的減額も可)
3. 業績悪化改定事由に該当しないケース
以下のケースは業績悪化改定事由に該当せず、減額後の給与は定期同額給与に該当しない(=損金不算入となる)リスクがあります。
- 法人の一時的な資金繰りの都合による減額
- 単に業績目標値に達しなかったことによる減額
- 利益調整のみを目的とした減額
- 客観的な事情がない単なる将来の見込みによる減額
4. 同族会社における注意点
同族会社(港区・新橋の中小企業の多くが該当)では、株主と役員が同一人物であることが多いため、「株主との関係上やむを得ない」という説明が困難になる場合があります。国税庁Q&Aでも、同族会社の場合は「役員給与の額を減額せざるを得ない客観的かつ特別の事情を具体的に説明できるようにしておく必要がある」と注意喚起されています。
具体的には、以下の資料を整備しておくことが重要です。
- 取締役会議事録(減額の理由を具体的に記載)
- 経営改善計画書
- 月次試算表等の財務データ
- 取引先・金融機関との交渉記録
5. 3か月経過後の増額改定が認められないケース
通常改定期間(事業年度開始から3か月)を過ぎた後の増額改定は、臨時改定事由(職制上の地位の変更等)に該当しない限り、増額部分が損金不算入となります。国税庁Q&Aの事例では、3月決算法人が5月の定時株主総会で通常改定を行った後、9月に臨時改定事由に該当しない増額を行った場合、増額分×残り月数が損金不算入とされています。
まとめ
業績悪化時の役員報酬減額は、客観的な事情の存在と適切な証拠書類の整備が不可欠です。港区・新橋で事業を営む中小企業の経営者は、減額を検討する段階で税理士に相談し、損金算入が否認されないよう万全の対策を講じましょう。
次回予告:最終回の第5回では、「使用人兼務役員の活用と不相当に高額な役員給与の判定基準」について解説し、連載全体のまとめを行います。
よくある質問(Q&A)
- Q1: コロナ禍のような感染症拡大は業績悪化改定事由に該当しますか?
- A1: 感染症拡大により実際に売上が大幅に減少し、経営状況が著しく悪化した場合や、今後著しく悪化することが不可避と認められる場合は、業績悪化改定事由に該当し得ます。ただし、客観的な状況を具体的に説明できることが必要です。
- Q2: 減額改定後、業績が回復した場合に期中で増額に戻すことはできますか?
- A2: 事業年度開始から3か月以内であれば通常改定として増額可能ですが、3か月経過後の増額は臨時改定事由に該当しない限り損金不算入となります。業績回復後の増額は、翌事業年度の通常改定で行うのが安全です。
- Q3: 業績悪化改定事由による減額の場合、届出は必要ですか?
- A3: 定期同額給与の業績悪化改定事由による減額については、税務署への届出は不要です。ただし、事前確定届出給与の変更の場合は、変更届出書の提出が必要です(株主総会等の決議日から1か月以内)。
根拠法令・参考判例
- 法人税法第34条第1項第1号(定期同額給与)
- 法人税法施行令第69条第1項第1号ハ(業績悪化改定事由)
- 法人税基本通達9-2-13(業績悪化改定事由の意義)
- 国税庁「役員給与に関するQ&A」Q1、Q1-2(平成24年4月改訂)
参考リンク