2026年最新版 港区・新橋の中小企業経営者のための役員報酬改定の税務実務
第3回/全5回:法人税・所得税・社会保険料を考慮した最適報酬額の決め方
執筆:No.1税理士法人
第1回・第2回では、定期同額給与と事前確定届出給与の法的要件を解説しました。第3回では、港区・新橋の中小企業経営者が最も関心を持つテーマ——「結局、役員報酬はいくらに設定すべきか」について、法人税・所得税・社会保険料の3つの視点から実務的に解説します。
1. 役員報酬設定の基本的な考え方
役員報酬の金額設定は、単に「手取りを最大化する」だけでなく、以下の要素を総合的に考慮する必要があります。
- 法人税の実効税率と所得税・住民税の累進税率のバランス
- 社会保険料(健康保険・厚生年金)の負担額
- 法人の内部留保と信用力の確保
- 将来の退職金支給を見据えた設計
2. 法人税率と所得税率の比較
中小法人(資本金1億円以下)の法人税の実効税率は、おおむね以下のとおりです。
- 所得800万円以下の部分:約25%(法人税15%+地方税)
- 所得800万円超の部分:約34%(法人税23.2%+地方税)
一方、個人の所得税・住民税の税率は累進課税であり、課税所得が増えるほど税率が上がります。
- 課税所得330万円超〜695万円以下:所得税20%+住民税10%=30%
- 課税所得695万円超〜900万円以下:所得税23%+住民税10%=33%
- 課税所得900万円超〜1,800万円以下:所得税33%+住民税10%=43%
法人税の実効税率(約25%〜34%)と個人の税率を比較し、法人に利益を残すか個人で受け取るかを判断します。
3. 社会保険料の影響を忘れない
役員報酬には社会保険料(健康保険料・厚生年金保険料)が課されます。2026年度の概算負担率は、労使合計で約30%(会社負担約15%、個人負担約15%)です。
ただし、厚生年金保険料には標準報酬月額の上限(65万円・年収換算約780万円)があり、健康保険料にも上限があります。この上限を超える部分には社会保険料が課されないため、報酬額が一定水準を超えると社会保険料の負担率は逓減します。
4. 実務的なシミュレーション例
【前提条件】港区・新橋で会社設立した法人、想定利益(役員報酬支給前)2,000万円、役員1名
- パターンA:役員報酬600万円→法人所得1,400万円、法人税等約420万円、個人の税・社保約150万円、合計負担約570万円
- パターンB:役員報酬1,200万円→法人所得800万円、法人税等約200万円、個人の税・社保約360万円、合計負担約560万円
- パターンC:役員報酬1,800万円→法人所得200万円、法人税等約50万円、個人の税・社保約600万円、合計負担約650万円
この例では、パターンBが税・社保の合計負担が最も少なくなります。ただし、法人の内部留保や将来の資金需要も考慮する必要があります。
5. 近年のトレンド:法人に利益を残す戦略
法人税率の引下げ傾向と所得税・社会保険料の増加傾向を踏まえ、近年は「役員報酬を抑えて法人に利益を残し、将来の退職金として受け取る」という出口戦略が注目されています。退職所得は分離課税で2分の1課税(勤続年数に応じた控除あり)のため、トータルの税負担を大幅に軽減できます。
まとめ
役員報酬の最適額は、法人税・所得税・社会保険料の3要素を総合的にシミュレーションして決定すべきです。港区・新橋の税理士に相談し、自社の状況に応じた最適解を見つけましょう。
次回予告:第4回では、「役員報酬の減額改定と業績悪化改定事由」について、損金算入が認められるケースと認められないケースを具体的に解説します。
よくある質問(Q&A)
- Q1: 役員報酬をゼロにすることは可能ですか?
- A1: 法律上、役員報酬をゼロにすることは可能です。ただし、社会保険の被保険者資格に影響が出る場合があるほか、生活費を会社から借り入れると「役員貸付金」が発生し、銀行評価に悪影響を及ぼす可能性があります。
- Q2: 配偶者を役員にして報酬を分散することは有効ですか?
- A2: 配偶者が実際に職務を遂行している場合は、所得分散効果があります。ただし、職務実態がないにもかかわらず報酬を支給した場合は、不相当に高額な部分として損金不算入となるリスクがあります(法人税法第34条第2項)。
- Q3: 令和8年度税制改正で役員報酬に影響はありますか?
- A3: 令和8年度(2026年度)税制改正大綱では、基礎控除の引上げ(62万円)や給与所得控除の最低保障額引上げ(69万円)が盛り込まれています。役員個人の所得税負担がわずかに軽減される方向ですが、役員報酬の損金算入要件自体に変更はありません。
根拠法令・参考判例
- 法人税法第34条第2項(不相当に高額な役員給与の損金不算入)
- 法人税法施行令第70条(過大な役員給与の額)
- 所得税法第28条(給与所得)、第30条(退職所得)
参考リンク