2025/5/30
事業を始める際に必要な資金の融資を受けられる創業融資。
営業実績が乏しくても申込できる創業融資は創業したばかりの企業にとって、非常に頼もしい融資でしょう。
しかし、融資を受けた資金は、必ず返済しなければいけません。
返済に関する計画を適切に立てなければ、まわりまわって経営を苦しめる重荷になってしまう可能性もあります。
この記事では、創業融資を受ける際の返済期間について詳しく解説します。
一般的な返済期間の目安や返済計画の立て方、返済する際の注意点も合わせて解説しています。
上記に当てはまる人にぴったりの情報をお届けします。
ぜひ、参考にしてみてください。
創業融資とは、創業期の企業を対象とした融資制度です。
本来、融資審査では会社の実績が重視されることが多く、実績を持たない創業したての企業は審査において圧倒的に不利と言えます。
しかし、創業融資の場合、実績の乏しい企業であっても前向きに融資を検討してもらえるのが特徴です。
企業が将来的に経済の発展に貢献してくれることを目的としているケースも多く、国や地方自治体が母体となって行われる創業融資も少なくありません。
なかでも、特に有名なのは日本政策金融公庫の創業融資です。
創業融資の返済期間は、一般的に申込者が設定して希望を提出し、金融機関が内容を審査、調整して決定されます。最長期限だけを設定されていることが多いため、期限内で返済期間を何年に設定するのか検討しましょう。
創業融資の返済期間は金融機関ごとに異なりますが、日本政策金融公庫の新規開業資金は以下のとおりです。
使用用途 | 返済期間(最長) |
設備資金 | 20年以内 |
運転資金 | 10年以内 |
上記の返済期間は最長期間であるため、この期間内であれば任意で返済期間を設定可能です。設備資金の場合は5~10年、運転資金の場合は5~7年に設定して融資を受けている人が多い傾向にあります。
融資した資金が正しく運用されるよう、融資資金には使用用途が定められています。設備資金には以下が挙げられます。
会計で資産に計上できるものの多くは設備資金に挙げられます。稀に、金融機関から必要な設備資金の報告を求められることがあるため、どのような資金が設備資金に該当するのか理解しておきましょう。
運転資金には以下が挙げられます。
事業を運営するために必要な資金の多くは運転資金に該当します。
万が一、設備資金として融資を受けた資金を運転資金として使用してしまうと、一括返済などのペナルティを受ける可能性もあるため注意しましょう。
基本的に、返済期間は最長期間以内であれば、申込者が任意で設定して融資申請できます。
例えば、日本政策金融公庫の新規開業融資を設備資金として申込む場合、最長期限は20年ですが、スムーズな返済ができそうなのであれば返済期間は10年として申請することができます。
ただし、審査の際に事業計画と返済期間に乖離があったり、返済期間の設定が現実的でない場合、担当者によって変更されることもあるでしょう。審査の場では、計画性のない返済プランはマイナス評価を受ける可能性が少なくありません。
事前に融資先の担当者に返済計画についての相談をして、妥当と判断してもらえる期間を調べておくのがおすすめです。
本記事中では日本政策金融公庫の新規開業融資を例として紹介していますが、同じ金融機関内であっても、融資プランによって利率や返済期限は異なるため注意しましょう。
日本政策金融公庫においても、融資プランによって以下の違いがあります。
融資プラン | 融資限度額 | 利率 | 返済期間 (設備資金) | 返済期間 (運転資金) |
新事業育成資金 | 7億2,000万円 | 0.85~2.5% | 20年以内 | 7年以内 |
スタートアップ支援資金 | 20億円 | 1.10~2.5% | 20年以内 | 20年以内 |
新事業活動促進資金 | 7億2,000万円 | 1.35~2.65% | 20年以内 | 7年以内 |
利用を検討している融資の利率や返済期限について、事前に確認しておきましょう。
返済期間のなかには「うち措置期間〇年以内」と記載されていることが少なくありません。措置期間とは、返済額のうち元本を除く金利のみを支払うことが認められている期間を指します。
支払い額を抑えられるため、措置期間を上手く利用することで、企業運営を起動に乗せやすくなることもあります。
例えば、日本政策金融公庫の新規開業融資の場合、運転資金の返済期間10年以内のうち、5年以内であれば措置期間を定めることができます。また、スタートアップ支援資金の場合、返済期間20年以内のうち、10年以内であれば措置期間に設定可能です。
措置期間の希望が必ずしも通る訳ではありませんが、経営計画を綿密に立てて無理なく融資を返済していけるよう、措置期間を上手に活用しましょう。
措置期間を決める際には、経営計画を厳しく見積もった際に、資金繰りが難しい期間を算出することから始めるのがよいでしょう。
一般的に、創業から半年もしくは1年のうちに利益を出すのは難しいと言われています。もちろん例外はありますが、突発的に社会情勢が変化してしまった場合まで考え、どんな企業でも「半年は利益を出すのが難しい」という前提を置いておくとよいでしょう。
そのため、措置期間は最低でも半年は必ず設定しておくべきだという意見もあります。
出来れば、経営が軌道にのるタイミングで元本も含めた返済を始められるのが理想的と言えるでしょう。
綿密に事業計画を立てたうえで、措置期間を設定してみてください。
返済が難しくなるケースでは「もっと措置期間を長くしておくべきだった」という声が多く聞かれます。事業計画を綿密に立てず、どんぶり勘定で「多分半年後位には元本の返済を始められるだろう」と措置期間を決めてしまう人が少なくないのです。
実際は、思ったように客足が伸びなかったり、認知が広まらず受注が増えなかったりするなど半年立っても軌道に乗れないケースは珍しくありません。「前職のツテで創業前から顧客をキープできているから、創業後スムーズに軌道に乗れるはず」といった確証のない事業計画も大変危険です。
実際は「前職との付き合いもあるから乗り換えることはできない」など、思ったより受注が小口になってしまったり音沙汰がなくなってしまったりすることもあります。
措置期間は、このような想定外の状況でも返済に猶予を持たせるための制度です。上手に活用できるよう、最悪のケースを想定した事業計画でも返済できるプランを考えてみましょう。
最後に、返済期間を設定する際の4つのポイントを紹介します。
返済期間を決める時には、無理なく返済できる返済額を算出しましょう。
毎月の営業利益のなかから、返済に充てられる金額を算出します。営業利益とは、売上高から家賃、人件費、仕入れ費、光熱費などの経費を差し引くことで計算できます。
法人の場合は、創設者であっても従業員として報酬が人件費に含まれますが、個人事業主の場合は、事業主の生活費などを算出し忘れるケースが少なくありません。個人事業主の場合、人件費として生活に必要な資金を差し引いて営業利益を算出しましょう。
営業利益から、月々いくらであれば無理なく返済できるのかを計算し、返済期間を決定してください。
営業利益から逆算して返済額を決める際に、最も注意したいのが「手元にいくら資金を残すのか」という点です。営業利益を全て返済に充てれば、短い期間で完済できるため、金利も少なくて済むでしょう。
しかし、万が一何らかのトラブルが起きてしまった場合、手元に資金がなければ運営がままならなくなる可能性があります。
上記のようなトラブルが起こった時に、運転資金として利用できる資金を手元に残しておく必要があります。
金利は手元に資金を残すための出費と捉えて、手元に資金を残しながら緊急時でも返済を続けていける金額を設定するのがおすすめです。
ここまで、無理のない返済金額の設定について解説してきたため、なかには「それなら最長の期間にすればよいのでは?」と考えている人もいるでしょう。
しかし、ここで長期間の返済に関するデメリットについても理解しておきましょう。
返済期間を長く設定すると、事業で新しい事に挑戦したいと考えた際、追加融資を受けられなくなる可能性があります。
最初の融資の返済率が30%未満の場合、追加融資を受けられない可能性が高いです。
大事なチャンスを逃してしまう場合もあるため、単純に「最長に設定しておけばよい」と考えるのではなく、事業の成長を予測して綿密な返済計画を立ててください。
融資の申込時に返済期間を設定しますが、事業が上向きで大きな利益が出せた場合は繰り上げ返済や一括返済が可能です。
繰り上げ返済できることも考慮したうえで、確実な返済計画を立てましょう。
創業融資の返済期間について詳しく紹介してきましたが、ご理解いただけたでしょうか。
返済期間を設定する際には「綿密な事業計画」「営業利益」「手元に残す現金」をポイントに検討しましょう。
合わせて、措置期間を有効に使うことで手元に資金を残しやすくなり、緊急時にも揺るぎなく事業運営を続けていけるでしょう。
事業運営は想像できないことが起こることもあります。だ
からこそ、何が起きても事業を継続していけるよう計画的に返済できるよう期間を設定してみてください。
創業融資の返済計画は、事業運営に大きく関わる問題です。
重大な問題だからこそ、プロにアドバイスをもらうのもよいでしょう。
No.1税理士法人では、これまで数々の中小企業の創業融資申請をお手伝いしています。
もちろん、返済計画についても相談を承っており、税理問題も踏まえたうえで事業にとって最も良い選択をご提案できます。
創業融資の返済期間に悩んでいる方は、ぜひお気軽にNo.1税理士法人までご相談ください。