2025/4/28
事業を開始するにあたって会社を設立するには、さまざまな準備や手続きが必要です。なかでも定款に記載する事業目的は、会社の将来的な展望も含めて記載する必要があり、どのような内容にするのか悩む方が少なくありません。
この記事では、会社設立の流れと事業目的の具体例について詳しく解説します。さまざまな業種があるなかでも、飲食業、建設業、介護サービス業、情報サービス業について詳しく紹介しているので、これらの業種で会社設立を検討している方は、ぜひ最後までチェックしてみてください。
会社を設立するには、さまざまな準備や手続きが必要です。一般的に、会社設立は以下の流れで行います。
・会社の概要を決定する
・法人用の実印を作成する
・定款を作成する
・定款の認証を受ける
・資本金の払い込みをする
・登記申請書類を作成する
・法務局で登記申請をする
上記の流れで手続きを進め、法人として会社を設立します。
会社設立では、定款の作成に時間を要するケースが少なくありません。定款(ていかん)とは、会社を運営するうえで定める規定を記載したものです。会社設立後は、定款に則って経営していく必要があるため、会社法に則った内容を正しく記載する必要があります。
定款に記載する内容にはさまざまな項目がありますが、必ず記載しなければならない内容のひとつとして「会社概要」があります。
定款には、会社概要として以下の内容を記載する必要があります。
・社名
・所在地
・資本金
・設立日
・事業目的
・株主の構成
・役員の構成 など
これらの情報は定款における絶対的記載事項です。そのため、会社概要が適切に記載されていない場合、定款が認証されない可能性があります。正確な情報を適切に記載してください。
会社概要として記載する項目に「事業目的」があります。事業目的とは、設立した会社で行う予定の事業内容です。
会社は定款に記載された事業目的に記載されていない事業を行えません。例えば、飲食業に限った内容で設立した会社で新たな事業として宿泊業を行う場合、定款に記載されている事業目的に宿泊業に関する記載がないのであれば、会社が行う事業として認められません。
定款は会社設立後に変更することもできますが、株主との決議や議事録の作成など手続きに手間がかかります。そのため、会社を設立する際は、将来的に行う可能性のある事業についても事業目的として記載しておくのが望ましいでしょう。
定款に記載する事業目的は、最低1つ記載する必要があり、上限は定められていないためいくつ記載してもよいとされています。
ただし、あまりに突拍子もない内容やさまざまな事業目的を記載し過ぎて、本来の事業目的が不鮮明になると定款の認証を受ける際に問題視されてしまう可能性もあるでしょう。
事業目的は、これから行う事業と将来的に行う可能性のある事業を分かりやすく記載することが望ましいとされているため、5~10個程度の内容で簡潔に記載するのがおすすめです。
事業目的を記載する際の具体例を業種別に紹介します。飲食業、建築業、介護サービス業、情報サービス業で、事業目的を考える際の参考にしてみてください。
飲食業で会社設立をする際の事業目的には以下のようなものが挙げられます。
・和食(中華料理・洋食)店の経営
・イタリアン(フレンチ)レストランの経営
・カフェの経営
・喫茶店の経営
・外食事業の経営
・居酒屋の経営
・インターネットを利用できる喫茶店
飲食店で商品販売なども行う場合には「食品関連商品の企画・開発および販売」などを記載しておくとよいでしょう。自社で提供しているメニューを家庭用商品として販売したい場合に有効です。
建築業で会社設立をする際の事業目的には以下のようなものが挙げられます。
・建築工事の請負および施工
・土木工事の請負および施工
・電気工事の請負および施工
・塗装工事の請負および施工
建築業の場合、1人親方として最初は小規模で事業を始めるケースも少なくありません。しかし、事業が軌道にのって従業員が増加してくると請負できる業種も自然と増えていくでしょう。将来的にどのような事業を展開していくのか計画し、事業目的として記載しておく必要があります。
建築業では、中規模になってくると産業廃棄物処理などの業務を請け負う会社も増えてきます。そのため、事業目的に「産業廃棄物処理業」や「古物の売買」などを記載しておく会社も少なくありません。
介護サービス業で会社設立をする際の事業目的には以下のようなものが挙げられます。
・介護保険法に基づく居宅サービス事業
・介護保険法に基づく地域密着型サービス事業
・介護保険法に基づく施設サービス事業
・介護保険法に基づく介護予防サービス事業
介護サービス業の場合、さまざまな業務が含まれるために包括的に業務内容を示せる記載方法を選ぶとよいでしょう。上記の記載方法で事業目的を記載した場合、以下の業務内容を行う旨を示すことができます。
訪問介護事業や訪問入浴介護事業など、要介護者として認定を受けた人の自宅での生活をサポートする居宅型サービス全般。福祉用具貸与や特定福祉用具販売なども含まれる。
定期巡回や地域密着型通所介護など、要介護者や高齢者向けの地域密着型サービス全般。認知症対応型通所介護や地域密着型介護老人福祉施設の入所者生活介護なども含まれる
介護老人福祉施設や介護老人保健施設、介護療養型医療施設など、介護保険サービスを利用した入居が可能な公的介護施設全般
介護予防訪問介護や介護予防通所介護など、高齢者などが生活機能を維持できるよう支援する介護予防サービス全般。介護予防福祉用具貸与や特定介護予防福祉具販売なども含まれる。
情報サービス業で会社設立をする際の事業目的には以下のようなものが挙げられます。
・電気通信事業
・IT関連のハードウェアおよびソフトウェアの販売
・ITシステムの構築
・ネットワークシステムの企画、開発、保守管理
・WEBコンテンツの制作
・インターネットを利用した広告事業など
情報サービス業の場合、対応できる分野が幅広いため、将来的にどのような事業を行いたいのかを検討し、できる限り記載しておくことが重要です。「ITコンサルティング事業」や「インターネットコンテンツ事業」など、幅広い分野をカバーできる事業目的を記載しておくのもよいでしょう。
会社設立に伴い、事業目的を記載する時には、スムーズに定款の認証を受けるために、正確かつ適切な記載が求められます。事業目的を定款に記載する時には、以下のポイントを抑えて内容を考えてみてください。
定款に記載する事業目的は、これから設立する会社でどのような事業を行うのかを説明する目的があります。そのため、事業目的が明確でない場合、定款の認証を受けられない可能性もあるでしょう。
事業目的は、誰が見てもどのような事業を行うのか分かりやすいよう明確に記載するのがポイントです。メインで行う事業は簡潔に記載し、付随する事業を包括的に記載すると、第三者から見ても理解しやすくなります。
会社は原則として定款に記載されている事業目的以外の事業を行うことができません。そのため、事業目的を記載する際には、将来を見据えて展開する可能性のある事業についても記載しておくのがよいでしょう。
幅を持たせる際に「関連する一切の事業」などの文言を加えるケースも多くみられます。幅を持たせる文言を加えることで、事業分野を広くカバーすることが可能です。
定款の承認を行う際には以下の3つの点において内容がチェックされます。
・適法性(違法性のない事業であるか)
・営利性(営利を目的とした事業であるか)
・明確性(誰が見てもどのような事業を行うのか理解できるか)
事業目的を考える際にも、これら3つの要素を満たす内容にしましょう。
事業の内容によっては、行政機関などの許認可が必要です。飲食業の場合は、飲食店経営許可が必要ですし、リサイクルショップの場合は古物商許可などが求められます。
許認可は基本的に会社を設立してから取得しますが、許認可の取得時に「許認可に対応した事業目的の記載」が求められるケースもあります。
会社設立に際して、許認可が必要な場合は、対応している行政機関に事前相談を行い、定款に記載すべき内容を確認しておくと安心でしょう。
会社設立の際は、定款の作成が大きなポイントとなります。なかでも、将来を見据えて慎重に内容を検討すべきなのが事業目的です。今後の展望を考え、将来的に展開する可能性がある事業について幅広く事業目的を記載しておきましょう。
定款の内容は後から変更することもできますが、手間や費用が発生するため、会社設立時に適切に作成しておくのが理想です。しかし、事業ごとにどのような文言で事業目的を記載しておくべきなのかを判断するのは、簡単ではありません。
No.1税理士法人は、会社設立を適切かつスムーズに行いたい経営者の強い味方です。税理のプロが、今後の展望も見据えたうえで適切な定款を作成できるよう会社設立をサポートいたします。会社設立でお悩みの方は、ぜひお気軽にご相談ください。