お役立ちコラム

【第2回/全5回】港区での会社設立完全ガイド|費用を4万円節約する電子定款の作り方

2025/11/14

【第1回】起業のメリットと会社形態の選び方 はこちら

港区での会社設立に向けた準備は進んでいますでしょうか。第1回では、港区で起業するメリットや会社の基本事項の決め方について解説しました。

連載第2回は、会社設立手続きの中核ともいえる「定款(ていかん)の作成と認証」がテーマです。
「定款って何?」「どうやって作ればいいの?」という基本的な疑問から、設立費用を4万円も節約できる「電子定款」の具体的なメリットと作成方法まで、専門家が分かりやすく解説します。

そもそも「定款」とは?なぜ重要なのか?

定款とは、「会社の憲法」とも呼ばれる、会社の組織や運営に関する根本規則を定めた書類です。会社を設立する際には、必ずこの定款を作成し、株式会社の場合は公証役場(こうしょうやくば)で認証を受ける必要があります。

定款が重要な理由は、以下の3点です。

  1. 会社のルールブックになる: 役員の選任方法、利益の配分、事業内容など、会社運営のあらゆるルールが定款に基づいて行われます。
  2. 法的な効力を持つ: 定款に記載された内容は法的な拘束力を持ち、株主や役員はこれに従う義務があります。
  3. 対外的な信用を示す: 金融機関からの融資や重要な取引の際には、定款の提出を求められることがあります。会社の基本情報とルールを示す、いわば「会社の公式自己紹介状」です。

このように、定款は会社設立の土台となる非常に重要な書類なのです。


定款に記載すべき3つの事項

定款に記載する内容は、法律によって「絶対的記載事項」「相対的記載事項」「任意的記載事項」の3つに分類されます。

(出典:日本公証人連合会 公証事務

1. 絶対的記載事項(これがなければ定款が無効に!)

必ず記載しなければならない項目です。一つでも漏れていると、定款そのものが無効になってしまいます。

  • 商号: 会社名(例:株式会社〇〇)
  • 事業目的: 会社が行う事業内容
  • 本店の所在地: 会社の住所(市区町村まででOK。例:東京都港区)
  • 設立に際して出資される財産の価額又はその最低額: 設立時の資本金の額
  • 発起人の氏名及び住所: 会社を設立する人の情報
  • 発行可能株式総数: 会社が将来発行できる株式の上限数(設立時の発行株式数の4倍~10倍程度が一般的)

2. 相対的記載事項(記載しないと効力が生じない)

記載がなくても定款は有効ですが、記載しなければその制度の効力が認められない項目です。会社の実情に合わせて重要なルールを定めます。

  • 株式の譲渡制限に関する規定: 「株式を譲渡する際は、会社の承認が必要」といったルール。これにより、望まない第三者が株主になることを防げます。中小企業のほとんどがこの規定を設けています。
  • 役員の任期伸長: 取締役の任期は原則2年ですが、最長10年まで伸長できます。役員変更登記の手間と費用を削減できるメリットがあります。
  • 現物出資: 金銭以外(車、PC、不動産など)で出資する場合の規定。
  • 株主総会の招集通知期間の短縮: 本来2週間前までに行う招集通知を、1週間に短縮する規定。

3. 任意的記載事項(会社のルールを自由に設定)

法律に違反しない範囲で、会社が任意に定めることができる項目です。

  • 事業年度(決算期): 会社の会計期間(例:毎年4月1日から翌年3月31日まで)
  • 役員の員数: 取締役を何名置くか、など
  • 株主総会の議長: 誰が議長を務めるか
  • 定時株主総会の招集時期: 決算後3ヶ月以内など

これらの項目を、ご自身の事業計画に合わせて適切に盛り込むことで、スムーズな会社運営の基盤ができます。


設立費用を4万円節約!「電子定款」作成のススメ

定款の作成方法には「紙の定款」と「電子定款」の2種類があります。結論から言うと、会社設立をするなら「電子定款」が圧倒的におすすめです。

比較項目紙の定款電子定款
収入印紙代40,000円0円(不要)
作成方法Word等で作成し、印刷・製本するWord等で作成し、PDFに変換する
認証方法公証役場に持参法務省のオンラインシステムで申請
必要なもの・マイナンバーカード
・ICカードリーダライタ
・専用ソフト(Adobe Acrobatなど)
メリットPC環境がなくても作成可能印紙代4万円が節約できる
デメリット印紙代がかかる専用機器とソフトの準備が必要

なぜ電子定款は印紙代が不要なのか?

これは印紙税法という法律で、「課税文書」に対して印紙税が課されると定められているためです。紙の定款は物理的な「文書」とみなされますが、PDFなどの電子データは「文書」に該当しないため、印紙税が課されないのです。

電子定款作成の準備と流れ

ご自身で電子定款を作成・認証するためには、以下の準備が必要です。

  1. マイナンバーカードの取得: 発起人全員分が必要です。
  2. ICカードリーダライタの購入: 数千円程度で購入できます。
  3. ソフトウェアの準備:
    • Adobe Acrobat(有料版): PDFに電子署名を行うために必要です。
    • 法務省「PDF署名プラグイン」のインストール(無料)
  4. 「申請用総合ソフト」のインストール(無料): 法務省の登記・供託オンライン申請システムからダウンロードします。

手続きはやや煩雑なため、時間と手間をかけたくない場合は、税理士や司法書士などの専門家に依頼するのが確実です。 専門家は電子定款の作成環境を整えているため、ご自身で機器を揃えることなく、印紙代4万円の節約メリットを享受できます。


港区周辺の公証役場と定款認証の実際の手順

定款の原案が完成したら、公証役場で認証を受けます。(※合同会社の場合は認証不要です)

Step 1: 事前確認

いきなり公証役場へ行くのではなく、必ず事前に電話やメールで定款の内容に法的な問題がないかを確認してもらいます。これにより、当日の手続きがスムーズに進みます。

Step 2: 公証役場へ予約

事前確認が完了したら、訪問日時を予約します。

【港区を管轄・周辺の公証役場】

  • 新橋公証役場: 港区新橋2丁目
  • 虎ノ門公証役場: 港区虎ノ門1丁目
  • 芝公証役場: 港区芝公園1丁目
  • その他、東京都内どこの公証役場でも認証は可能です。

Step 3: 認証当日の持ち物

  • 定款: 3通(公証役場保管用、会社保管用、登記申請用)
  • 発起人全員の印鑑証明書: 発行後3ヶ月以内のもの
  • 実印: 発起人全員分
  • 認証手数料: 約52,000円(資本金の額による)
  • 身分証明書: 運転免許証など
  • 委任状: 代理人が手続きする場合

Step 4: 認証完了

公証人の前で定款の内容を確認し、署名・捺印して手続きは完了です。認証済みの定款を受け取ります。


まとめ:定款作成は専門家への相談が近道

今回は、会社の憲法である「定款」について解説しました。

定款は、一度作成すると変更する際に手間と費用がかかります。将来の事業展開も見据え、法的に不備のない、かつご自身の会社に最適な内容で作成することが極めて重要です。
特に、印紙代4万円を節約できる電子定款は必須と言えますが、ご自身で準備するにはハードルが高いのも事実です。

会社設立の専門家にご相談いただければ、これらの手続きを迅速かつ確実に代行することが可能です。

次回予告
第3回は「登記申請編」です。資本金の払い込みから、法務局への登記申請書類の作成、提出方法まで、会社を法的に誕生させるための最終ステップを詳しく解説します。


【会社設立の定款に関するQ&A】

Q1. 事業目的は、具体的にどのように書けば良いですか?あまり多く書きすぎると良くないでしょうか?

A1. 事業目的は「誰が見ても何をやっている会社か分かる」ように、明確に記載することがポイントです。例えば「コンサルティング業」だけでなく「中小企業向けの経営コンサルティング業」のように具体的に書きます。将来的に行う可能性のある事業も記載しておくべきですが、あまりにも多くの事業目的を羅列すると「何が専門の会社か分からない」という印象を与え、融資審査などで不利に働く可能性もゼロではありません。主要な事業と、関連性の高い将来の事業を10個程度に絞って記載するのが一般的です。

Q2. 本店所在地を自宅に設定する場合、定款には住所をどこまで書けば良いですか?

A2. 定款に記載する本店所在地は、最小行政区画である「東京都港区」までの記載で問題ありません。これにより、将来港区内でオフィスを移転した場合でも、定款を変更する必要がなくなります(定款変更には費用がかかります)。ただし、登記申請の際には、番地や建物名、部屋番号まで詳細に記載する必要がありますのでご注意ください。

Q3. 定款を作成した後、内容を変更することはできますか?

A3. はい、可能です。定款の内容を変更するには、株主総会での「特別決議」(議決権の過半数を有する株主が出席し、出席した株主の議決権の3分の2以上の賛成)が必要となります。また、商号や事業目的など、登記事項に関わる内容を変更した場合は、法務局で変更登記の手続きが必要となり、登録免許税(原則3万円)がかかります。そのため、設立時の定款作成は慎重に行うことが重要です。

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