2025/11/14
港区での会社設立に向けた準備は進んでいますでしょうか。第1回では、港区で起業するメリットや会社の基本事項の決め方について解説しました。
連載第2回は、会社設立手続きの中核ともいえる「定款(ていかん)の作成と認証」がテーマです。
「定款って何?」「どうやって作ればいいの?」という基本的な疑問から、設立費用を4万円も節約できる「電子定款」の具体的なメリットと作成方法まで、専門家が分かりやすく解説します。
定款とは、「会社の憲法」とも呼ばれる、会社の組織や運営に関する根本規則を定めた書類です。会社を設立する際には、必ずこの定款を作成し、株式会社の場合は公証役場(こうしょうやくば)で認証を受ける必要があります。
定款が重要な理由は、以下の3点です。
このように、定款は会社設立の土台となる非常に重要な書類なのです。
定款に記載する内容は、法律によって「絶対的記載事項」「相対的記載事項」「任意的記載事項」の3つに分類されます。
(出典:日本公証人連合会 公証事務)
必ず記載しなければならない項目です。一つでも漏れていると、定款そのものが無効になってしまいます。
記載がなくても定款は有効ですが、記載しなければその制度の効力が認められない項目です。会社の実情に合わせて重要なルールを定めます。
法律に違反しない範囲で、会社が任意に定めることができる項目です。
これらの項目を、ご自身の事業計画に合わせて適切に盛り込むことで、スムーズな会社運営の基盤ができます。
定款の作成方法には「紙の定款」と「電子定款」の2種類があります。結論から言うと、会社設立をするなら「電子定款」が圧倒的におすすめです。
| 比較項目 | 紙の定款 | 電子定款 |
|---|---|---|
| 収入印紙代 | 40,000円 | 0円(不要) |
| 作成方法 | Word等で作成し、印刷・製本する | Word等で作成し、PDFに変換する |
| 認証方法 | 公証役場に持参 | 法務省のオンラインシステムで申請 |
| 必要なもの | – | ・マイナンバーカード ・ICカードリーダライタ ・専用ソフト(Adobe Acrobatなど) |
| メリット | PC環境がなくても作成可能 | 印紙代4万円が節約できる |
| デメリット | 印紙代がかかる | 専用機器とソフトの準備が必要 |
これは印紙税法という法律で、「課税文書」に対して印紙税が課されると定められているためです。紙の定款は物理的な「文書」とみなされますが、PDFなどの電子データは「文書」に該当しないため、印紙税が課されないのです。
ご自身で電子定款を作成・認証するためには、以下の準備が必要です。
手続きはやや煩雑なため、時間と手間をかけたくない場合は、税理士や司法書士などの専門家に依頼するのが確実です。 専門家は電子定款の作成環境を整えているため、ご自身で機器を揃えることなく、印紙代4万円の節約メリットを享受できます。
定款の原案が完成したら、公証役場で認証を受けます。(※合同会社の場合は認証不要です)
いきなり公証役場へ行くのではなく、必ず事前に電話やメールで定款の内容に法的な問題がないかを確認してもらいます。これにより、当日の手続きがスムーズに進みます。
事前確認が完了したら、訪問日時を予約します。
【港区を管轄・周辺の公証役場】
公証人の前で定款の内容を確認し、署名・捺印して手続きは完了です。認証済みの定款を受け取ります。
今回は、会社の憲法である「定款」について解説しました。
定款は、一度作成すると変更する際に手間と費用がかかります。将来の事業展開も見据え、法的に不備のない、かつご自身の会社に最適な内容で作成することが極めて重要です。
特に、印紙代4万円を節約できる電子定款は必須と言えますが、ご自身で準備するにはハードルが高いのも事実です。
会社設立の専門家にご相談いただければ、これらの手続きを迅速かつ確実に代行することが可能です。
次回予告
第3回は「登記申請編」です。資本金の払い込みから、法務局への登記申請書類の作成、提出方法まで、会社を法的に誕生させるための最終ステップを詳しく解説します。
Q1. 事業目的は、具体的にどのように書けば良いですか?あまり多く書きすぎると良くないでしょうか?
A1. 事業目的は「誰が見ても何をやっている会社か分かる」ように、明確に記載することがポイントです。例えば「コンサルティング業」だけでなく「中小企業向けの経営コンサルティング業」のように具体的に書きます。将来的に行う可能性のある事業も記載しておくべきですが、あまりにも多くの事業目的を羅列すると「何が専門の会社か分からない」という印象を与え、融資審査などで不利に働く可能性もゼロではありません。主要な事業と、関連性の高い将来の事業を10個程度に絞って記載するのが一般的です。
Q2. 本店所在地を自宅に設定する場合、定款には住所をどこまで書けば良いですか?
A2. 定款に記載する本店所在地は、最小行政区画である「東京都港区」までの記載で問題ありません。これにより、将来港区内でオフィスを移転した場合でも、定款を変更する必要がなくなります(定款変更には費用がかかります)。ただし、登記申請の際には、番地や建物名、部屋番号まで詳細に記載する必要がありますのでご注意ください。
Q3. 定款を作成した後、内容を変更することはできますか?
A3. はい、可能です。定款の内容を変更するには、株主総会での「特別決議」(議決権の過半数を有する株主が出席し、出席した株主の議決権の3分の2以上の賛成)が必要となります。また、商号や事業目的など、登記事項に関わる内容を変更した場合は、法務局で変更登記の手続きが必要となり、登録免許税(原則3万円)がかかります。そのため、設立時の定款作成は慎重に行うことが重要です。