2025/11/7
この連載記事では、港区で会社設立を目指す起業家の方々に向けて、必要な知識と手続きを全5回にわたり徹底的に解説します。記念すべき第1回は、会社設立の「準備編」です。
なぜビジネスの拠点として港区が選ばれるのか、その魅力から、株式会社と合同会社どちらを選ぶべきか、そして設立前に決めておくべき基本事項まで、成功への第一歩を具体的にガイドします。
数あるエリアの中で、なぜ港区や新橋が起業家に選ばれるのでしょうか。それは、他のエリアにはないビジネス上の強力なアドバンテージがあるからです。
(出典:港区ホームページ)
港区(特に青山、赤坂、六本木、麻布など)や新橋に本社を構えることは、それだけで企業のブランドイメージと社会的信用力を大きく高めます。
名刺に記載された「東京都港区」の住所は、取引先や金融機関、そして顧客に対して「しっかりとした基盤を持つ企業」という安心感を与え、ビジネスを円滑に進める上で有利に働きます。
港区は、JRや東京メトロの主要路線が集中する、都内屈指の交通の要所です。
この優れたアクセスは、顧客訪問、従業員の通勤、地方や海外からの来客対応など、あらゆるビジネスシーンにおいて時間的コストを削減し、機会損失を防ぎます。
港区には、外資系企業、ITベンチャー、大手広告代理店、コンサルティングファームなど、多種多様な企業が集積しています。
これにより、以下のようなメリットが生まれます。
異業種交流会やセミナーも頻繁に開催されており、刺激的なビジネスコミュニティに参加できることも大きな魅力です。
港区は、起業家を支援するための制度が非常に充実しています。専門家による経営相談から、資金調達のサポートまで、起業の各ステージに応じた支援が用意されています。
これらのメリットを最大限に活用することで、事業のスタートダッシュを成功させることができます。
法人にはいくつかの種類がありますが、ほとんどの場合は「株式会社」か「合同会社」のどちらかを選択することになります。それぞれの特徴を理解し、ご自身の事業計画に合った形態を選びましょう。
| 比較項目 | 株式会社 (K.K.) | 合同会社 (G.K.) |
|---|---|---|
| 社会的信用度 | 非常に高い。上場も可能で、資金調達の選択肢が広い。 | 高いが、株式会社に比べるとやや劣る場合がある。 |
| 設立費用(目安) | 約25万円〜(定款印紙代、登録免許税など) | 約10万円〜(登録免許税など) |
| 意思決定 | 株主総会で行う(所有と経営が分離) | 社員(出資者)の同意で行う(所有と経営が一致) |
| 利益の配分 | 出資比率(株式の保有数)に応じて配当 | 定款で自由に決めることができる |
| 役員の任期 | 原則2年(最長10年まで伸長可)。任期ごとに登記が必要。 | 任期なし。登記の変更が不要。 |
| 資金調達 | 株式発行による増資、社債発行など多様 | 基本的には出資者からの追加出資や借入 |
どちらの形態も、設立後に変更すること(合同会社から株式会社へ)も可能です。まずはご自身の事業の将来像を具体的にイメージし、最適な会社形態を選択することが重要です。
会社形態が決まったら、次に定款作成や登記申請に必要となる会社の基本事項を決定します。これらは会社の根幹となる重要な項目です。
会社の顔となる名前です。以下のルールを守る必要があります。
法務局のオンラインシステムで、同一商号・同一本店の会社がないか事前に調査することができます。また、ドメインが取得可能かどうかも合わせて確認しておくと良いでしょう。
その会社がどのような事業を行うのかを具体的に記載します。
(参考:中小企業庁 会社設立の手続き)
会社の「住所」です。自宅、賃貸オフィス、バーチャルオフィスなど、様々な選択肢があります。
事業の元手となる資金です。法律上は1円から設立可能ですが、以下の点を考慮して金額を決めることが重要です。
会社を設立する人、つまり資本金を出す人です。株式会社の場合は「発起人」、合同会社の場合は「社員」と呼ばれます。誰が、いくら出資するのかを決めます。
会社の経営を行う人たちです。
会社の会計期間です。自由に決めることができますが、一般的には以下の点を考慮して決定します。
今回は、「港区で会社設立をするメリット」「会社形態の選択」「設立前の基本決定事項」について解説しました。
会社設立は、単なる手続きではありません。あなたの事業の未来を左右する重要な意思決定の連続です。特に、本日解説した基本事項は、一度決めると変更に手間や費用がかかるものも多いため、専門家のアドバイスも参考にしながら、慎重に検討を進めましょう。
次回予告
第2回は「定款作成・認証編」です。会社の憲法とも言われる「定款」の作り方と、設立費用を4万円節約できる電子定款のメリットについて詳しく解説します。
Q1. 港区に住んでいなくても、港区で会社を設立できますか?
A1. はい、可能です。代表者の方の住所が港区外であっても、本店所在地を港区に設定すれば、港区で会社を設立することができます。バーチャルオフィスやレンタルオフィスを本店所在地として登記することも一般的です。ただし、融資制度など一部の公的支援では、代表者の居住地や事業の実態が問われる場合がありますので、事前に確認することをおすすめします。
Q2. 新橋のバーチャルオフィスで法人登記を考えていますが、何かデメリットはありますか?
A2. バーチャルオフィスは、初期費用を抑えられる大きなメリットがありますが、デメリットも存在します。例えば、法人口座の開設審査が厳しくなる傾向があります。また、許認可が必要な事業(人材派遣業、古物商など)では、事業実態がないとして認められない場合があります。ご自身の事業内容でバーチャルオフィスが適切かどうか、事前に金融機関や管轄の行政庁に確認することが重要です。
Q3. 資本金は1円でも良いと聞きましたが、本当に大丈夫でしょうか?
A3. 法律上は1円での設立も可能ですが、実務上はおすすめできません。資本金は会社の体力や信用度を示す指標の一つです。資本金が極端に少ないと、金融機関からの融資が受けにくくなったり、取引先に不安を与えたりする可能性があります。また、設立直後の運転資金がなければ、すぐに事業が立ち行かなくなるリスクもあります。事業計画に基づき、最低3ヶ月以上の運転資金を目安に資本金額を決定することをおすすめします。