2025/9/2
皆様、こんにちは。港区新橋の税理士法人のNo.1税理士法人です。
ここ新橋・港区エリアで日々ご活躍される経営者の皆様、そして従業員の皆様、日頃より当法人をご愛顧いただき、誠にありがとうございます。
さて、毎年この時期になると「年末調整」という言葉を耳にされることと存じます。多くの皆様にとっては「少し書類を書く、年に一度の恒例行事」といったイメージかもしれません。
しかし、断言します。2025年の年末調整は、過去数十年で最も大きな変化が訪れる、特別な年です。 これは単なる事務手続きの変更ではありません。政府が物価高や人手不足といった日本の構造的な課題に対応するために行う、皆様の「手取り額」に直結する抜本的な税制改正なのです。
この歴史的な変化を乗りこなすため、本日から5回にわたり、経営者の皆様、そして従業員の皆様が「最低限これだけは知っておきたい」という実務のポイントを、どこよりも分かりやすく解説してまいります。
第1回の本日は、すべての変更の土台となる「所得控除の引き上げ」という、最も重要な基本の”キ”についてお話しします。
まず「控除」という言葉に苦手意識をお持ちの方もいらっしゃるかもしれません。簡単に言えば、控除とは「税金の計算対象から差し引くことができる金額」のことです。控除額が大きければ大きいほど、税金がかかる元の金額(所得)が小さくなり、結果として納める所得税が安くなる、という仕組みです。私たち新橋の税理士がご説明する際も、この点をまずご理解いただくようにしています。
今回、その代表的な控除である「基礎控除」と「給与所得控除」の2つが、そろって大幅に引き上げられることになりました。これは財務省が発表した令和7年度税制改正大綱の中心的な内容です。
「税金が安くなるのは分かった。では、いつから手取りが増えるのか?」
皆様が最も知りたいのは、この点でしょう。ここに、2025年最大の注意点があります。
実は、2025年1月から11月までの毎月のお給料から天引きされる税金(源泉所得税)の計算ルールは、改正前の低い控除額のままなのです。これは国税庁のウェブサイトでも明記されています。
そして、2025年12月に行う年末調整のタイミングで、初めて改正後の高い控除額が適用され、1年分の差額が一括で精算されます。
これが何を意味するか。
つまり、2025年の年末調整では、多くの従業員の皆様に例年よりも大幅に大きな還付金が発生する可能性が高いのです。これは嬉しい「サプライズ」ですが、仕組みを知らないと「なぜ12月だけこんなに手取りが多いのだろう?」と混乱を招きかねません。
経営者や経理ご担当者の皆様は、この仕組みをぜひ従業員の皆様に事前にお伝えください。「今年は国の制度変更で、12月に1年分の税金の調整が入ります」と一言添えるだけで、従業員の皆様の安心に繋がります。
Q. なぜ毎月の給料から天引きされる税額は来年まで変わらないのですか?
A. 全国の給与計算システムや経理実務の変更には時間がかかるため、混乱を避ける目的で、月々の源泉徴収税額表の改定は2026年1月からとされています。そのため、2025年中は「多めに天引き」しておき、年末調整で一括して正しい税額に合わせる、という方法が取られます。
Q. 基礎控除の上乗せ特例は、全員が受けられるのですか?
A. いいえ、全員ではありません。この特例は物価高対策として、特に所得の低い層を手厚く保護するための時限措置です。合計所得金額が132万円(給与収入のみなら約200万円)以下の方が最大の95万円の控除を受けられ、所得が増えるにつれて上乗せ額は減少し、655万円を超えると上乗せはなくなります。
Q. 2025年の途中で退職した従業員の年末調整はどうなりますか?
A. 年の途中で退職された方については、会社で年末調整は行いません。退職時に発行する源泉徴収票は、改正前の税制で計算されたものになります。その方が税金の還付を受けるためには、ご自身で確定申告をしていただく必要があります。
本日は、2025年の年末調整を理解する上での大前提、「控除額が引き上げられる」という点と、それによって「年末に還付金が多くなる」という実務上のポイントをお伝えしました。
さて、この控除額の引き上げは、特にパート・アルバイトで働く方々の「働き方」に大きな影響を与えます。皆様が一度は耳にしたことがあるであろう、「103万円の壁」。この壁が、2025年から大きく姿を変えることになります。
次回、第2回(2025年9月9日投稿予定)「さようなら103万円の壁!新しくできた複数の『年収の壁』を徹底解剖」では、この最も身近で重要なテーマを深掘りしていきます。どうぞご期待ください。