2025/9/28
事業者として会社を運営するうえで、法令を遵守することは絶対的であり最低限必要な心構えと言えます。法令は「知らなかった」では済まされず、知らずに違反してしまった場合でも罰則等を課されることがほとんどです。
時には罰金や営業停止など、会社の存続に関わる重大な罰則を課せられてしまうこともあるでしょう。
事業を安定的に続けるためにも、事業者は法令に関する理解を深める必要があります。この記事では、補助金に関わる法令「補助金適正化法」について分かりやすく解説します。
補助金の申請を検討している事業者様や、すでに補助金の交付を受けている事業者様は、ぜひ参考にしてみてください。
補助金とは、主に省庁や地方自治体などの機関が目的を持って事業者に交付する金銭を指します。省庁や地方自治体から交付される補助金は税金によって支払われているため、厳格なルールのもと適正に利用することが原則として求められます。
補助金適正化法は、補助金が適正に使用されるよう定めた法令です。
正式名称は「補助金等に係る予算の執行の適正化に関する法律」とされています。
補助金適正化法において、補助金は以下のように定義されています。
補助金適正化法において、「補助金等」とは、国が国以外の者に対して交付する次に掲げるものが該当する
基本的に、補助金適正化法における補助金の定義は省庁をはじめとする国から交付される補助金を指し、地方自治体から交付される補助金は対象外となります。
地方自治体による補助金は民法上の契約関係として両者合意の元交付されるからです。
しかし、一見地方自治体から交付されている補助金のように見えても、実際は省庁など国から交付されているケースも少なくないため、知らず知らずの内に補助金適正化法の対象となることも珍しくありません。
参照:補助金等に係る予算の執行の適正化に関する法律 | e-Gov 法令検索
補助金適正化法は大きく分けて3つの不正利用を取り締まるための法令と言えます。それぞれの違反内容と、違反に伴う罰則について紹介していきましょう。
補助金の申請および受給に際して虚偽申請した場合や補助金を不正に受給した場合、以下の罰則を課せられる可能性があります。
5年以下の拘禁刑または100万円以下の罰金
上記の罰則は、違反内容や程度によって併科される可能性もあります。
合わせて、虚偽申請や不正受給が発覚した場合、以下の対応を求められる可能性も高いでしょう。
補助金適正化法に基づき、加算金は返還命令を受けた補助金を受賞した日から納付する日までの日数、延滞金は返還期日を過ぎてからの日数に応じて年10.95%の金額と定められています。
補助金を定められた用途以外で利用した場合、以下の罰則を課せられる可能性があります。
3年以下の拘禁刑または50万円以下の罰金
上記の罰則は、違反内容や程度によって併科される可能性もあります。
合わせて、虚偽申請や不正受給が発覚した場合、以下の対応を求められる可能性も高いでしょう。
加算金や延滞金に関しては、虚偽申請・不正受給の際と同様の金額での支払いが求められます。
補助金の申請を行い採択された場合、事前に定められたとおり遂行状況を報告する義務があります。これらの報告によって、適切に事業が遂行されていないと判断された場合、申告通りの事業を遂行するよう命令されるケースがあるのです。
これらの遂行状況の報告義務を行ったり、命令違反を行ったりした場合、以下の罰則が課せられる可能性があります。
3万円以下の罰金
合わせて、虚偽申請や不正受給が発覚した場合、以下の対応を求められる可能性も高いでしょう。
加算金や延滞金に関しては、虚偽申請・不正受給の際と同様の金額での支払いが求められます。
補助金適正化法で定められた法令は、補助金を利用する事業者にとって遵守すべきものです。その理由は「違反すると罰則が課せられるから」といった単純な問題だけにとどまりません。
補助金適正化法に限らず何らかの法令違反をした場合、その事業には「法令違反をした」という経歴が残ることになります。
これは社会的信用を大きく損なう内容であり、今後金融機関などに融資を申し込む際にも大きな足枷となるでしょう。コンプライアンスに対する強い意識を持って、法令順守する必要があります。
補助金の利用に際して、補助金適正化法を理解する重要性などは分かったものの「法律を隅から隅まで把握するのは難しい」「結局何に気を付ければ良いのか分からない」という人も多いでしょう。
事業者は以下の5つのポイントを抑えることで、補助金適正化法違反を犯すリスクを低減することができます。
補助金の申請をする際には、必ず補助金の使用用途や対象事業など、事前に提示されている募集要項を確認しておきましょう。
これは補助金適正化法違反を犯さないための最も根本的な対処法と言えます。
また、採択された際にも改めて交付決定にあたり規約等が通知されます。隅々まで内容を確認しておくことが大切です。
交付においてよく聞かれるトラブルに「採択されたものの、実は対象が一部の事業だけだった」というものがあります。複数事業を展開し、それぞれに申請を行ったものの、採択されたものは一部に事業であったというケースは珍しくありません。
前述したトラブルは採択通知の確認漏れによって起こることが多いため、交付決定の内容についても十分に確認しておきましょう。
事業の最終的な責任は事業者にありますが、補助金の交付に伴い管理や申請等は別の従業員が行うケースも多いでしょう。
ここで重要なのが、従業員のコンプライアンス教育です。いくら事業者が法令違反を犯さないために注意を払ったとしても、実働する従業員にコンプライアンス意識がなければトラブルは起きやすくなってしまいます。
補助金に関する管理部門を決定する、責任者を定める、定期的なチェック体制を作るなど、従業員のコンプライアンス教育と共に体制を作ることも重要です。
補助金の交付を受ける場合、企業は費用をどのように利用しているのか、使用目的や用途を明確にして会計処理をしておきましょう。
会計処理した内容は、補助金を適切に活用していることを証明する資料にもなります。
補助金の交付に関わる領収書や請求書は一定の期間、適切に保管することが求められるため、これらの信憑書類と共に帳簿なども保管しておくことが大切です。監査などが行われた場合でも、これらの信憑書類を提出することで、正当性を主張できます。
補助金に関わる作業の多くは、期日が厳密に定められています。期日に遅れてしまうことで補助金の交付が受けられなくなると、企業にとって大きな損害が生じてしまうこともあるでしょう。
基本的に会計処理や事務処理は正確さとスピードが重視されるものですが、補助金に関しては特に余裕をもった会計処理・事務処理をしておくとよいでしょう。
特に、少ない人数で会計や事務処理を担当しているような中小企業の場合、業務負担が大きすぎて事務作業などを後回しにしてしまうことも珍しくありません。こういった場合には、補助金に関する会計・事務作業に要員を追加で配置するなどの方法も有効です。
補助金を利用するのであれば、それに関する内容を十分理解することは当然とも言えますが、実際はさまざまな業務に追われる中でそこまで手が回らないという声も多く聞かれます。
会計処理などに関しても「本当にこれで大丈夫なのかな?」と思っても確認する術がなく、提出後に指摘され修正を求められるケースなども少なくありません。
こういった問題を解決するためには、専門家にサポートを依頼する方法がよいでしょう。法令に精通しており、適切に対応してもらえる専門家に依頼すれば、会計処理や事務処理の正確性・スピードともに向上し、事業者は業務に集中することができます。
もちろん、専門家に依頼するからと言って丸投げの状態はよくありませんが、適正に補助金を活用するために専門的な知識を持つ人のサポートを受けることは業務効率化にも繋がります。
国から交付されている補助金は国民が納めている税金から交付されています。そのため、利用する事業者は、事前に提示されている条件に基づいて適正な利用が求められます。
万が一、不正受給をはじめ、適正に補助金が利用されていない事が発覚した場合、さまざまな罰則が課せられ、社会的な信用を失ってしまうことも、利用を検討している事業者は理解しておくべきでしょう。
正しく補助金を活用できるよう、事業者は法令を遵守するための施策を考えることが大切です。施策にはさまざまな方法がありますが、正確かつ適正に補助金を活用するのであれば専門家のサポートを受けるのがおすすめです。
No.1税理士法人では、これまで数々の補助金申請において採択を獲得してきた実績を持ち、補助金申請に関するノウハウがあります。また、顧問税理士として補助金を効率的に運用するアドバイスも可能です。補助金の申請や運用に関して専門家のサポートを検討しているのであれば、ぜひNo.1税理士法人にご相談ください。